ホラー文学界の奇才 平山夢明氏が語る 『ダンテズ・インフェルノ~神曲 地獄篇~』その魅力 ※『ダ・ヴィンチ 2010年2月号掲載記事より』

まるで遠慮のない不気味さ!やっぱり作り手は躊躇しちゃダメ

ダンテの戦闘に容赦がないところがいいよね。見方によっては残酷以外の何ものでもないんだけどさ。そういうのが嫌いという人はやらないでしょう?でも、好きだという人には徹底的に見せた方がいいと思うんですよ。だったらさ、やらなきゃ(笑)。俺はエンタテインメントの必勝法って何事にも徹底することじゃないかと思っている。遠慮しちゃダメなんだよ。これこそプロ魂だと思うな。

ギリギリのラインにある嫌悪感は一級のエンタテインメントだ

なるほど、なぜ彼らが『神曲』を選んだのかわかった気がした。ダンテが描いた『神曲 地獄篇』のイメージを、宗教観や倫理観といった能書きをすべて取っ払った状態で、そのまま体験させてくれるものだったんだね。テーマを古典、しかも世界中の誰もが知っている名作から引っ張ってきたことには大きな意味があると思う。なぜなら、古典として残るものは絶対に色褪せない力があるから。それも『ダンテズ・インフェルノ』の魅力だと思う。

グロテスクだが不快感はない──何より想像を超えたものに出会えるのは最高のエンタテイメントだ。──平山夢明

ひらやま・ゆめあき●作家。ミステリー、ホラー、都市伝説ものなどジャンルを問わず、恐怖と人間の深層に巣くうおぞましさを追求してきた異才。『独白するユニバーサル横メルカトル』で2006年日本推理作家協会賞短編部門賞、07年度『このミステリーがすごい!』国内部門1位を獲得。短編『ミサイルマン』、長編『メルキオールの惨劇』の他、近作『ダイナー』が話題に。

※『ダ・ヴィンチ 2010年2月号掲載記事より』